高齢者「寝たきり」を予防するには-歩く筋力を鍛える-

高齢者が「寝たきり」になると、筋力が低下し、歩くことが困難になります。「寝たきり」は本人だけでなく介護をする家族にも大きな負担がかかります。

赤ちゃんから高齢者までの二足歩行を追究して50年、筋電図を活用した歩行研究の第一人者である父も、病気で寝たきりとなり、歩くことができなくなりました。その後、研究成果をもとに「寝たきり」を防ぐ方法を実証しました。その著書で、筋力維持の重要性を指摘していますので、一部ご紹介します。

また、今年2月に刊行した『見直そう!歩き方 STOP! 運動不足・座りすぎ・転倒』をおすすめします。この本では、転倒・寝たきりを予防する歩き方と体操を提案しています。どうすれば、筋力低下を防ぐことができるか、以下の2つのポイントから考えましょう。

・「寝たきり」の予防には、「立つ・歩く」筋力を鍛える
・「寝たきり」になっても、意識して体を動かし筋力低下を防ぐ

高齢者の筋力低下は命取り

父が癌を患い余命1ヵ月を宣告されました。「自分の足で一生歩きたい」と願い、毎日一緒に歩き、共同で歩行研究をしてきた父が、まさか寝たきり状態になるなど、思ってもいませんでした。私たちは積み重ねた研究を生かし、在宅でリハビリに取り組みました。酸素マスクをつけて「寝返り」ができない状態から、ベッドの上で少しずつ手足の関節を動かし、筋肉を使っていきました。起き上がり、ベッドの上に「座る」ようになった後は、歩行器を支えに「立つ」「歩く」トレーニングを続けました。今までの筋電図研究が役立ち、歩行器なしで歩けるほどに回復しました。家族で外出できたときは涙が出るほど嬉しかったです。半年後の父の誕生日に出版した共著『寝たきりからのリハビリウォーク』が紹介された新聞記事を見て、医師も「奇跡だ」と感嘆されていました。その著書から、父の言葉をご紹介します。

著書『寝たきりからのリハビリウォーク』から抜粋
「筋肉をつけることが、これほど難しいとは思わなかった。胃がないので食が細く、筋肉に必要な栄養を摂ることが、大切なリハビリであると痛感した。妻と娘が探してくれた栄養補助食品を用いながら、現在も筋肉を強くしている。体力は筋力であり、筋力は体力の源である。足の筋力がないと歩けない。腕の筋力がないと支えられない。背中の筋力がないと、立つことも座ることもできない。」

「私は、永年続けてきた筋肉に関する研究の成果が、多方面にわたって役立つことの確信が持てた。今、この状態になって、初めて気が付いたことである。これからもまだまだ研究を続けたい。研究成果をもとに試行錯誤しながら体を動かして、まだ不安定だが、一生懸命、自分の足で歩いている。『あきらめず、頑張りとおせ、最後まで!』と何度も言いながら…」

書籍「見直そう!歩き方 STOP! 運動不足・座りすぎ・転倒」

83歳の父は、最後まで体を張って自らの研究、『歩行は復活できる』を実証しました。「高齢者が寝たきりになったからといって必ずしも人生が終わるわけではない。同じ境遇の人を勇気づけ、自ら実証したことが誰かの役に立てば」と願って、歩き続けました。

今年2月に刊行した『見直そう!歩き方 STOP! 運動不足・座りすぎ・転倒』は、生涯、自分の足で歩き続けることをテーマにしています。研究で筋力を鍛えれば再び歩くことができるとわかっていても、筋肉が衰えた状態では動くことは、想像以上に大変だと父の姿をみて痛感しました。

この本では、6つのテーマに合わせて、効果的な歩き方のポイント・筋力アップの方法を具体的に提言しています。

  1. 運動不足
  2. 姿勢と健康
  3. 座りすぎ
  4. 国内外のガイドライン
  5. 職場での転倒災害
  6. 高齢者の転倒・寝たきり

「高齢者の転倒・寝たきり」の章では、健康寿命をのばす歩き方、生涯歩き続けるために運動習慣を身につけることの重要性、特に転倒・寝たきりを防ぐために筋力を維持する必要性に焦点をあてまとめています。

高齢者の「転倒・寝たきり」予防のために、保健所・地域包括センター・高齢者施設など医療や介護・福祉サービスなどで活用していただければ幸いです。1人でも多くの方が元気に歩いて健康寿命を延ばされることを心より願っています。

歩行開発研究所 所長

おすすめ本

書籍「見直そう!歩き方 STOP!運動不足・座りすぎ・転倒」

日常生活の中で、意識して歩き方を変えることで、普段よりたくさん筋肉を使って身体活動量を増やすことができます。この本では、筋電図的研究をもとに、身体活動を増やす効果的な歩き方のポイントを紹介しています。また、日常生活に取り入れられる運動も提案しています。
職場や地域での健康づくり・転倒災害防止・ウォーキング推進に!

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