【歩行研究者が解説!】なぜ高齢者の体力測定が必要か

高齢者の体力測定

なぜ、高齢者の体力測定が必要か 

最近、あらゆる地域で、高齢者の体力測定が行われています。体力測定は、健康づくりに欠かせません。その一方で、積極的に参加してもらえるよう、その大切さをわかりやすく説明することは、難しいです。 

体力測定で測る項目は、日常生活とどのように関わっているのでしょうか。今回は、「握力・開眼片足立ち・10m障害物歩行」の意味づけについて、まとめました。 

握力:健康状態を伝える指標 

「握手をすると、その人が元気かどうか、一瞬にしてわかる」といわれるほど、握力は、健康状態を表す指標として重要です。 

握力が必要とされる場面は、生活の中でよく見られます。たとえば、荷物を持つ、物をつかむ、ペットボトルのふたをあけるなどです。高齢になればなるほど、筋力が低下し、足腰の力だけでなく、握力や腕の力が重要になってきます。手すりにつかまって階段を上る、電車やバスで手すりにつかまって立ち上がるなど、足腰の筋力が衰えた分、上半身の筋力を使って補うことになります。そのとき、握力がなければ、自分の体を支えることができず、転倒リスクが高まります。 

今どのくらい握力があるのかを知ることが大切です。体力測定で、自分の現状を確認してみましょう。日頃から、手をグー・パーさせるだけでも効果があります。息を吐きながら、拳をつくって力強く握り、思いっきり手を開きましょう。手指が動かないと、物をつかむのが難しくなります。グー・パー体操は、指の関節が固まるのを防ぐこともできます。 

開眼片足立ち:バランス能力は転倒を防ぐ 

目を開けまま、片足で何秒立てますか。片足立ちは、バランス能力の指標として、よく使用されます。瞬間でも片足立ちができなければ、歩くことはできません。両足よりも片足で立っている方が不安定になるので、バランスのコントロールが必要になるのです。歩行がかなり不安定になると、浮いている足を早く地面に着けようとする傾向がみられます。片足で立つ時間がより長くなると、歩行が安定してきます。 

片足立ちは、歩くときだけでなく、階段を利用するときや、お風呂に入るときも活用されています。片足でのバランス能力が衰えると、生活に支障が出てきます。実際に、片足で立つ時間が短いと、靴下・ズボンを履くのが難しくなり、椅子や誰かの補助が必要になってきます。 

片足でのバランス能力を高めるときは、太ももを高く上げる、前だけでなく横・後ろにあげるなど、応用した動きも取り入れてみましょう。不安定な場合は、安定した机や壁、手すりを用いて、行うことをお勧めします。余裕が出てきたら、目を閉じて、片足立ちをしてみましょう。これは、難易度が高いので、無理をせず実施してください。 

10m障害物歩行:全身の動きをコントロールする 

歩きながらバランスをとることは、立ってバランスをとるより難しいです。専門的に説明すると、片足立ちは静的バランス能力が、障害物歩行は動的バランス能力が必要になります。障害物に気づく、片足でバランスを取ってよける、移動するなど、身体のさまざまな機能を使って、転倒しないよう全身の動きをコントロールします。家の中の障害物をよけて歩くことができるか、歩道やお風呂場などの段差につまずいたときに体を立て直せるか。つまずき・転倒は、骨折や寝たきりを招くこともあります。 

10m障害物歩行で、つまずき・転倒を予防する力を確認できます。測定後は、転倒しないよう意識して、いろいろな障害物のあるコースを歩いたり、少しでこぼこした道を歩いたりしてみましょう。 

高齢者の体力測定を広めよう 

体力測定で、自分の衰えてきている部分に気づくことが自立した生活への第一歩となります。測定結果が日常生活にどのように関わってくるかを知ることが大切です。体力測定に参加するだけではなく、その結果をもとに、個人に合った健康づくりの運動を行いましょう。 

監修:歩行開発研究所所長 岡本香代子 

ARuku編集部 

おすすめ本

書籍「見直そう!歩き方 STOP!運動不足・座りすぎ・転倒」

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