歩く力を維持することの重要性-高齢になると必ず筋力は衰える-

「一生、自分の足で歩きたい」と思っていても、高齢になると筋力が衰えて、立つ・歩くといった日常動作がスムーズにできなくなります。今から意識して、歩く力を維持することが重要です。

高齢になれば必ず筋力は衰える

人間の体は使わなければ確実に衰えていきます。高齢者が1日中座っていると、歩く筋力が衰えて階段が苦痛になるので外出を控えてしまいます。車いすで外出するときにも、立つ・座る動作が必要な場面が多くあります。また、1日中座っているだけで疲れて、横になる時間が増えていきます。寝ている状態が長くなり体を全く動かさなくなると、筋力だけでなく心肺機能、認知機能など身体の機能が衰え、体力と気力がなくなっていきます。

運動不足・座りすぎでサルコペニア・ロコモ・フレイルになり、寝たきり・介護となった高齢者が、筋肉を鍛えて歩くことは非常に大変です。毎日体を動かしている健康な方でも、歩いているよりも座っている方が、座っているより寝ている方が筋活動が少ないので、無意識に快適で楽な方を選んでしまいます。しかし、筋活動が少ない身体的に楽な生活習慣は筋力が衰えます。

歩行研究者の父が入院して歩けなくなった

「自分の足で一生歩きたい」と願い、毎日一緒に歩き、2人3脚で歩行研究をしてきた父が、まさか入院して歩けなくなるなど、思ってもいませんでした。2週間の入院で筋肉が細くなり、歩くことはもちろん、立つこと、立ち上がること、座ること、起き上がることもできなくなりました。

そのころ、高齢者の歩行の維持と再獲得について、歩行の発達と退行のメカニズムをまとめていましたので、退院後の父と一緒に、研究成果を実証すべく、寝たきりから再び歩く挑戦が始まりました。しかし、研究では筋力を鍛えれば歩行が回復するとわかっていても、筋肉が衰えた状態では動くことが、想像以上に大変なことだと父の姿をみて痛感しました。

歩行に必要な筋力を鍛える

生涯、自分の足で歩き、自立した生活を送るためには、今から意識して体を動かす習慣を身につけることが重要です。高齢になってから急に筋力をつけることは、至難の業です。筋力を鍛えることはすべての人の健康に役立ちます。また、座り続ける時間を減らし、こまめに立って歩くだけで健康効果が得られます。

日本は世界トップクラスの長寿国であり、これからますます高齢化が進みます。当たり前のように積極的に体を動かす取り組みが日本中に広まり、健康で元気に歩き続ける人が多くなることを望んでいます。自分の意志で求める場所に移動できることが理想的な長寿への近道であり、それには自分の足で歩くことが一番重要になるのです。

一生、自分の足で歩く!最後まで、歩きたい

歩行開発研究所 所長

著書「見直そう!歩き方」より一部抜粋

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