【健康づくりの新常識】座りすぎを減らし積極的に体を動かす!

歩く人

「朝にウォーキングしているから大丈夫」「仕事で体を動かしているから問題ない」「スポーツクラブに通っているから心配ない」と思っていませんか?
運動している人でも、家や職場で座ったままの時間が長い人は要注意です。せっかくの運動効果も「座りすぎ」で帳消しになることも。今、世界でも推奨されている健康づくりの新常識、「座りすぎ」対策がなぜ必要なのかを、お話しします。

アクティブカウチポテト

「アクティブカウチポテト」という言葉があります。これは、*中高強度の身体活動を実施しているが、テレビ視聴などで、座っている時間が長い人のことです。「休日は運動しているが、平日は仕事でほとんど座っている」「力仕事や立ち仕事で体を動かしているが、自宅ではテレビ視聴で長時間座っている」場合があてはまります。

せっかく適度な運動をしていても、それ以外の時間がほとんど座っていれば、運動効果が取り消しになってしまいます。1時間に数分は立ち上がりましょう。テレビを観ているときはCMで必ず立ち上がる、こまめにトイレに行く、用事をすませる、簡単な体操をする、歩くなど、座ったままの時間を減らして、体を動かすことが重要です。

※中高強度の身体活動:速歩き、ジョギング、ランニングなど、心拍数を上げる運動・生活活動。

座る動作は、ふくらはぎの筋肉が働かない

驚くことに、座っているときは、下半身の筋肉があまり使われていません。実際に、アメリカのミズーリ大学の研究では、立つ・歩く・座る動作の脚筋の活動を測定した結果、座っているときは筋活動がほとんどみられなかったと報告されています。ちなみに、歩行と椅子から立ち上がる動作は筋活動が大きく、立位は座位よりも筋活動の割合が高いそうです。私たちの筋電図解析からも、座位は歩行や他の日常動作に比べて、脚筋の活動がほとんどみられないことが明らかとなっています。立っているときでも、姿勢を保持するために、下半身の*抗重力筋であるふくらはぎの筋肉が持続的に活動しています。しかし、座ると、この筋活動はみられなくなるのです。

※抗重力筋:重力に対抗して、立つ姿勢を保つために働く筋肉の総称。

ふくらはぎの筋肉は「第2の心臓」!!

ふくらはぎの筋肉は、「第2の心臓」といわれるほど重要な筋肉です。歩くときは、必ず、ふくらはぎの下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)が使われます。下半身の血液を心臓に押し戻すポンプの働きをしています。ふくらはぎの筋肉がキュッと収縮したときに血管を圧迫する様子が、牛乳をギューッと絞り出すイメージと似ているので「ミルキングアクション」とも呼ばれています。ふくらはぎの筋肉がしっかりと収縮して、力強くポンプの役割を果たします。下半身にたまった血液を心臓に押し戻すことが、最も重要です。歩くとふくらはぎの筋肉だけでなく、太もも・おしりの筋肉が、より積極的に活動し血液循環が良くなります。

血の塊がつまる「エコノミークラス症候群」

乗り物で長時間座り続けていると、下半身の血流が悪くなって血栓(血の塊)ができやすくなります。その血栓が血液で運ばれ、肺の血管が詰まると、立ち上がったときに胸が苦しくなったり痛くなったりすることがあります。この「エコノミークラス症候群」は、職場・家での座りすぎや、寝たきり状態が長くなることによっても発症し、命に関わることもあるので注意が必要です。

もし、仕事中で、立って歩くことできない場合は、足先を上下に動かしたり、ふくらはぎを軽くもんだりして、血管が詰まらないように足の筋肉を刺激しましょう。また、トイレに行く回数を減らすため水分を控えてしまうと、血栓ができやすくなります。水分補給も大切です。特に、高齢者の座りすぎには、くれぐれも気をつけてください。 座っている状態が続くと、下半身の筋肉が使われないので、血流が悪くなります。健康リスクを高め、寿命を縮める要因の1つと考えられています。

座りすぎの時間を減らして体を動かそう

座りすぎ対策の基本は、まず「立つこと」「歩くこと」です。

身体活動の強さを安静時(座位)の何倍に相当するかで表す単位を「メッツ」といいます。座っている状態が1メッツで、歩行は3メッツです。立ってトイレに行ったり、書類を取りに行ったりすると座っているときの3倍、速歩きをすると4~5倍、速く階段上ったり駆け足すると7~8倍、血液循環が良くなり酸素摂取量が増加します。長時間座り続けるのではなく、こまめに立ち上がって移動することが大切です。

「座りすぎ」と「運動不足」は別の問題と考えましょう。長時間座ってしまうと、休日に体を動かしていても、その運動効果が帳消しになってしまいます。「運動不足」だけでなく「座りすぎ」も健康に悪いのです。座ったままの時間をなるべく減らし、積極的に体を動かす!これが、健康づくりの新常識です。

参考文献
『「座りすぎ」が寿命を縮める』(岡 浩一朗著, 大修館書店, 2017)
『ケリー・スターレット式「座りすぎ」ケア完全マニュアル』(ケリー・スターレットほか著, 医道の日本社編集部訳, 医道の日本社, 2019)
『WHO 身体活動・座位行動ガイドライン要約版』 (日本運動疫学会ほか, 2021)

ARuku編集部 

おすすめ本

書籍「見直そう!歩き方 STOP!運動不足・座りすぎ・転倒」

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